syrup16g 「Les Misé blue」 Zepp Yokohama 感想

syrup16gのライブに行った。思えばこのブログでsyrup16gについて言及したことってあんまりなかったのかもしれない。

横浜2日目、12月9日金曜日。2019年に恵比寿ガーデンホールに2日とも行ったが、それ以降は配信で見ていて生は久しぶりだった。

恵比寿のときも感じたが、今回もやはりソロで参加している人が多く、私も参加しやすかった。

zepp横浜には初めて行ったのだが、会場は綺麗なオフィス街にあり、ライブハウスっぽさがなかったので(ライブハウスといえば地下、真っ黒のイメージ)なんだか緊張した。

あと、ペットボトルの飲み物を買った時についてくるペットボトルホルダーがレコードのデザインになっていたので、音楽を愛している人が経営をしているんだ…と感動してしまった。

zeppのペットボトルホルダー

 

で、肝心のライブは1曲目から泣く。何度行っても本当に存在するんだよな、今ここで歌ってくれてるんだよなということに感動する。

コロナがこわくて2階の指定席をとったのだが1階に行きたかったな~と何度も思った。

セトリについては公式サイトで公開されている。

www.syrup16g.jp

今回のアルバム曲に関しては噛み締めるようにして聴いていて、「神のカルマ」でまた泣く。いやーそれは泣くよ。心療内科あたりから涙と身体の震えが止まらなくて、興奮した。

たたみかけるような天才、落堕、真空もやばかった。もっともっとやってくれと思った。

曲を聴きながらいろいろなことに思いを巡らせていて、syrup16gを聴くことで私は自分の頭の中を整理しているのだなと思った。特に今回のアルバムはその要素が強いと感じた。

なので全く新しいものを出されたというよりはこういう解釈もありますよと教えてもらった感じで、今までとは全く違うものを期待している人からすると物足りないのかもしれない(他人の感想を見ていないのでわからないけど)。

私の心の中に既にあるものが今回のアルバムによって掬いだされたような、ここにあるよとトントンと肩を叩かれたというような。

 

アルバムで好きなのは「Alone In Lonely」、「診断書」の流れ。

独りぼっちでいても/一人きりだと思えない/仲間に入れなくても/この世界を愛していた」を見て、「ハミングバード」の「セミだって花だって/悲しいと思える/人間の感性を/自分は愛している」を思い出した。ギターソロ最高。綺麗だ。自分が好きなものや好きな人や世界への見方をもう一度取り戻した気分になった。

ただ、「哀しいことがあっても 話し掛けないでね」から始まる一連の歌詞は本当に哀しくて、でもその哀しいってことを伝えたいあなたに拒否されているのがつらかった。

診断書は「自分ですらなくといいと/あなたから告げられたい そっと」のところが好き。メロディも全編通していい。言葉遊びも健在。

私は音楽を聴くときにメロディよりも歌詞を重要視していて、歌詞の意味について考えるのが好きだ。五十嵐隆は詩の中に遊び心があって、言葉遊びとかダジャレを昔からやっているが、その遊び心と詩と音がマッチしている気持ちよさを「診断書」で改めて気づかされた。

「詩はくだらないもの」詩人・谷川俊太郎が切り開いた詩の世界 | DMM英会話ブログ

もともと、詩は「声」だったわけです。文字がない時代から、詩はあったわけですから。誰かが、繰り返し詩を読む。すると子どもたちは、その声や音で詩を覚えていったわけですよね。言葉が持っている音楽性みたいなものがあったと思うんです。

今は活字で見る機会が増えて、つい言葉の持っている音を忘れがちなんですが、実際には、言葉には意味だけではなく、音があるし、色もあるし、なにかイメージもあるはずなんです。

僕も、「音」が楽しい詩を何編も作りました。昔、「かっぱ」という詩を書いたことがあるんです。「かっぱ かっぱらった かっぱ らっぱ かっぱらった……」と続くんですが、あれは日本だけでなく海外でも楽しんでもらえるんですよ。

海外で朗読する場合には、「かっぱかっぱらった」の内容をなんとなく拙い英語で説明してから読むんです。そうすると、日本語の意味はわからないはずなのに、結構うけるんですよね。

この音の楽しさみたいなものを、歌詞重要派に属している私にもしっかり教えてくれている。

 

あと「モンタージュ」の「あなたもまだ知らない場所二人で行って/あなたもまだ知らない貴方を見つけたり/明日もまた知らない場所二人で行って/新たにまた知らない自分を見つけたり」のところも大好き。こんな風に暮らしていけたら素晴らしいなって思う。

「うつして」はメロディで泣きそうになる。「あなたの その 痛みを うつして」という歌詞はいろいろな解釈ができると思う。私を通して映してと鏡に反射させるような感じなのか、写真に写すのか、それとも風邪を”うつす”みたいなコロナ、感染、みたいなイメージの連鎖なのか。

いまアルバムを聴きながら文章を書いているのだが「In My Hurts Again」の「言うこと聞かない子 どこ」が「言うこと聞かない鼓動」に聞こえた。きっとこの空耳的要素が今作にもたくさんあるのだろうと思うと聞き込むのがもっと楽しくなってくる。

「深緑の Morning glow」では歌を「うた」と表記しているのがとにかくすごいと思った。漢字にするのかひらがなにするのかカタカナにするのかは詩を書くうえで重要な要素だと思っているのだけど、「うた」って言われたらなんかかなわないなと思った。「うた」、優しい感じだ。きっとその歌は優しくて、朝焼けみたいにほのかにあたたかいんだろう。

最後の「Les Misé blue」はめちゃくちゃ真っ直ぐに、聴いている人に言葉と音とうたを届けてくれている。これ以上はないって締めの曲になっていて、満たされた感じになる。これを真っ直ぐに受け取れて嬉しい。

 

アルバムの中で「不労所得」「労災認定」というワードが出てくるのが面白いと思った。

あと、今作は「あなた」とか他人の存在を意識させる詞が多かった気がするんだけど、それは私が今まさに他人のことを気にしているからかもしれないし、本当に他者を意識して書かれた歌詞が多いのかわからない。syrup16gの音楽で改めて自分の心理状態を”うつして”いる。

宇宙服を着ているのは自分だけ他と違う宇宙人みたいな存在だからなのか。酸素あるんだから文句言わないのと言われてもやっぱりつらいものはつらい。

 

アルバムを聴きながら書いていたが、そろそろ音楽も終わる。

これをずっと聴いていたいけど、「また来年」というMCに祈りをこめて来年の活躍も期待してます。今後ともよろしくお願いします、syrup16g

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはそうと今回はグッズが可愛かった。くすんだ色合いが良い。

これは絶対買いですよ。

ライブグッズ パーカー

 

おしまい。