薔薇の足跡

王子様になりたがっていた君の使い魔がわり

の仔猫はもう小さなままじゃない。温室を抜

け出して駆け回る姿は、猫のように自由で花

のように笑っていた。薔薇の指輪に導かれな

くてもどこでもどこまでも行けるって教えて

くれたのは、他でもない君自身だった。手を

離そう。さがしているのは僕じゃない。一人

でも歩いて行けるなんてありきたりな台詞は

言わないよ。君はすでに一人じゃない。

まだ出会っていない誰か

物語と戦う私たちはいつも主人公

にはなれないまま走っている。汚

れた血を抱えてまだ出会っていな

い誰かをさがしているけど、どこ

にいるのか、本当にいるのかもわ

からない。ほとばしる汗も瞳の輝

きも全部嘘で、吹く風だけが本物

なんだ。君をさがしている。大声

で呼んでいる。返事も聞こえない

のに、また走っている。大切にで

きるかもしれない、まだ出会って

いない誰かをさがすため。

息が苦しい

同年代に比べて、劣っているなと感じる。

顔とか体とか成績とか家柄とかいろいろあるけれど、私は他人とのコミュニケーションが、下手というか、過剰というか、うまく調節できないから。

みんな、毎日あんまり悲しくないのかな、と思う。

死にたいってひんぱんに思わないのかな、それってとってもうらましいなと感じる。

もちろん外では誰にも言わないけれど。

わからない、みんな死にたいのかもしれない。絶望を抱えながら生きているのかもしれない。傷ついた心をひきずりながら、会社や学校に行っているのかもしれない。毎日電車に乗ろうとしても乗れなくて、寝ようと思っても寝られないのかもしれない。

自分だけがかわいそうだと思うな、特別だと思うな。「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」。

 

大丈夫。私はまだやれる。何とか頑張れる。診察の日まであと10日。

ご飯を食べて薬を飲んでいれば大丈夫。たまにはぱーっとお金を使えば良い。大丈夫。上手く歩かなくても、こけてもいいよ。まだこうして文章を書けてるんだから。心配なんて何もないんだよ。