過去と現在の彼ばかりで、未来の彼は少しも好きじゃなかった

終電を逃せなかった私の思いを乗せて新幹線は悠々と走る。今夜乗っているのが新幹線で良かった。だって心をものすごくはやく、どこかへ連れ去ってくれそうな気がするから。さっきまでの私を遠くに置いて。

 

誰でも良かったわけではないしもちろん彼が良かったわけだけど、甘い部分だけもらうことは不可能だし、上手くいったとしてもいつか終わりが来る。私の思いを伝えていないのに、相手の思いばかり知ろうとしてはだめなんだ。要求ばかりで、子どもみたいな恋だ。二人でやるということを忘れていた。

 

今夜一晩限りの思い出が欲しいとかそんなわけではなかったけど、今夜楽しく話せたらその先もどうにか続いていけそうな気がした。

 

でも幸せだった。お互い初めて入るお店で、カフェモカを飲み終わっても雑談は続いて。あなたは私を終始見つめて目をそらさなかったけど、本当に私を見ていたのだろうか。私の瞳に映る自分を見ていたのではないか。私の行動を真似したって無駄だよ。どちらかが言い出さなくては。だから言い出したのにはぐらかされたからその時点でもう、先が見えなくなってしまったのだ。恋愛にグレーはない。好きか嫌いかだよ。恋は人を分け隔てるものなんだよ。

 

赤いマフラーを拒否されて、それでも終電まで一緒にいてくれて、カフェモカは美味しくて、脈はあったけど本当は脈はなくて、雨は降ってたけど外は寒かったけどそんなの何でもなかった。足りないものは何だったんだろう。覚悟かな。最高のタイミングだったし、邪魔するものなんてほとんど無かったのにね。

 

あなたのいる土地を訪ねることもないでしょう。幸せになってくれよ。「今すぐ死んだほうがいい」って心を和らげてくれる素敵な人が見つかるといいね。見つかっても知らせはいりませんので。