決壊
しゅうまつは着実に近づいている
のに妙に明るい音楽を聴いている
ぱちんぱちん、と
指を鳴らしてはしゃぐ夜
その音は
一瞬で何かが終わってしまうようにも
聞える
朝が近づこうとも
霧が立ち去るのはまた
別の話で
雨傘をさしても
柄をつたって
僕の手首に
いくつもの
細い川ができる
皮膚の下の感覚があいまいになり
もうひとつの川を
みずから決壊させてしまう
鈍い痛みは
またひとつの川をつくる
ぱちんと世界が生まれる
なんていうのは嘘で
夜明けはいつも
しみだしてくる
朝は無音を連れて来て
しばらく横たわっていたが
だんだんと
あの音
が
せまってくる
夜明けのにおいをかいで
音の方向をかぎとれ
窓を開けると
芝刈り機の音が
耳についたので
ぱちん、と
決壊した