こいのことば 緑のルーペ 感想

恋、戀、乞い、孤悲…恋にはいろいろな字を当てることができる。今回は”こい”の物語「こいのことば」の感想。

 18禁では無いですが、性交をする描写がありますのでご注意ください。

こいのことば

こいのことば

 

 

エロ漫画家である主人公のせんせーが中学生の女の子悠里(ゆうり)ちゃんと恋愛するお話。恋愛といっても共依存的なところがあるので、あまり気持ちよく興奮できるタイプの話ではない。また背徳感や罪悪感によって成り立っているところがあり、夢オチの夢オチの夢オチ…というような構成をとっているので、読後感もあまりよくない。

しかし可愛い女の子は今作品でも健在で、むしろ今までより可愛さを描く実力が上がっている気がする。しかも金髪碧眼ロリとかではなく、黒髪でポニーテールというフィクションの世界ではわりと並だと思われるスペックの女の子をとても可愛く描いていた。

ただ、この主人公は好きになれない。だめだとわかっていながら中学生に手を出したこと、そしてそれを引き受けないこと。手を出したなら、あちら側が手を離すまでずっととなりにいる義務があると思う。それが出来ないなら子どもと恋愛してはならない。

わたしははじめ、悠里をうらやましいと感じた。傷ついている時にもしこんな大人が近くにいたら、中学生の時にわたしにせんせーみたいな人がいたら、そう考えた。しかし、読み終わってみて真逆のことを考えた。二人は出会うべきでない。前述したように、責任をとれずに逃げ腰でいるなら子どもと付き合ってはいけない。せんせーは悠里の前に現れるべきではなかった、いや、悠里こそせんせーの前に現れるべきではなかった。彼女は若い。これから忘れていけるだろう。しかしせんせーは物語の中で30歳になった。自分の言うことを信じてひたすらついてきてくれる女性と出会って、彼はこの先新しい恋愛ができるのだろうか。共依存から抜け出すべきはせんせーだ。悠里ではない。成長すべきは彼だ。本当に乞うているのはせんせーであり、せんせーに自分を重ねたあなたなのだ。

欲を言えば、わたしはバッドエンドが見たかった。せんせーと悠里の共依存エンドでもなんでも良いのだが(果たしてそれはバッドなのか?)、逃げ場の無い終わり方をして欲しかった。夢オチ的終わり方はだめではないし、読者に希望や考える余地を与える素敵な終わり方だと思うのだが、今作品ではびしっと一つの終わりを迎えてほしかった。主人公であるせんせーがもともと優柔不断で締まらない人なので、最後くらいスパッと終わっても良いと思う。年端もいかぬ女の子と優柔不断で責任感のない主人公が二人だけの世界で生きていくのをこの目で見たかった。次はそんな作品を探します。