いまきみとセックスをしたい

できることならいまきみとセックスをしたい。そしたら全部、少なくとも今はつらいことを上書きできるから。かき消していこうよ、一緒に。

そんな誘いに乗って僕は東京で女の子と会ったのだ。その子は自信がなさそうで不美人で、服装だけは妙に挑発的だった。

「セックスしなきゃ終わっちゃうんだよ。しなくてもずっと生きてられるとは思わないけど私なりの延命措置なんだよね」

「将来死ぬつもりなの?」

「死ぬつもりっていうか、私みたいのが生きていけるって思えないんだよね。社会とか世界って言われるものに適合できない、と思う。私なりにいまやってるつもりなんだけど、どうせ死ぬんだなって思うと、いろんなものが削がれていって…結局こういう安易なことになっちゃう。でも良いって思ってるよ」

「僕はそこまで死ぬとかは考えてないけど、セックスせずに終わる人生は嫌だったし、なんか僕が関わることによって…変えられたらとか、虫がいいけど」

「ねえもういいよ、早くしよう。時間はたくさんあるけどないんだよ。もう切羽つまってんだからさ」

 

結局セックスになっちゃうんだね。会話や言葉や目線では終わらないんだね。癒やされたいし、救われたい。本当はセックスなんて誰もしたくないって私は知ってるよ。そんなに楽しいもんじゃない。驚きも最初のうちだけ。ゲームや映画の方がよっぽど興奮するよ。でもそれじゃだめなんだ。嫌いだけど気持ちいいことするのが私には一番良いんだ。だからやめないよ。いつか死ぬまで小さく死に続ける。