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おおきくなりたくありません

すきなものはたくさんあります。苦手なものはこころのほつれ。

レイコは男と交われない。

物語

「今日はしないの?」

レイコの体が固まる。ああ、やっぱり言われてしまった。仕方のないことだけど、断るということはとても、つらい。

「ごめんなさい…今日もちょっと」

それしか言えない。言葉でつくろっても無駄だ。私ができないのは事実だし、応えられないなら必要以上に謝罪を重ねても意味はない。

「そうか…」

彼は明らかに残念そうにして、冷蔵庫から取り出したコーラを飲みながら自分の部屋に行ってしまった。申し訳ない、そう思うけれどどうしたらいいかはわからない。いや、ただセックスをすればいいのだ。私も積極的に体を求め合えばそれで万事解決なのだ。けれど私にはそれができない。

”本当はしたくないだけじゃないの?”

もうひとりの自分が語りかけてくる。したくないという気持ちはもちろんある。できないというのも体の素直な反応だ。

私には欠陥があるのだろうか。この問題に衝突するたび考えてしまう。いや、むしろ私自身が欠陥人間なのでは、と。普通の人が一体どれだけのペースでこれをしているのかはわからないけれど、レイコの場合は明らかに”レス”というやつだった。もう3ヶ月以上していない。歳を重ねればそれくらいが普通なのかもしれないが、レイコは22歳。むしろそれにハマっていてもおかしくない歳だ。親元から離れて彼と同棲を始めてから半年。もうレスになるなんて、とレイコは自嘲した。

彼はとても優しいし、丁寧な行為をする。初めてのとき、私が濡れていないことに気づくと、痛くないようにと優しくなめてくれた。レイコはそれがとても嬉しかった。この人は私を本当に愛してくれている、この人にずっと尽くしていこうと思った。

けれど、体は彼を拒絶した。レイコは優しくされても濡れなくなった。いつもだるくて、始まる前から最中や終わった後のことを考えてゆううつな気持ちになった。

そして、彼の一言。「寝ているだけでいいから」。

今考えると、レイコに負担をかけまいとする彼の優しさだったのだろう。けれどそのときは、私はダッチワイフじゃない。人間だ。心ある人間だ。としか思えなかった。「私はおもちゃじゃない」と言ってレイコは泣いた。彼はその日から、レイコを誘うときには控えめで、無理強いもしないようになった。

私たちは楽しい毎日を送っている。けれど男女らしいことは何一つとして行っていないのだ。私はそばにいるだけでいい。けれどそれを彼に求めることは傲慢だ。別れはもうすぐかもしれない。

レイコは彼の部屋をノックして言った。

「ねえ、キスしよっか」